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「賢人君の事…?」
「あぁ…あいつの想いは本物だ。俺が身を持って体験したからな」
彼の手が私の頬に伸びる。その優しく暖かい手のひらが私の頬をなぞった。
「綺麗だよ…瑠璃…」
私より頭一つ分身長の高い彼。私は見上げるように、彼は見下ろすようにお互いを見つめあった。
「司だって…カッコいいんだから…」
彼の綺麗な顔を見ていることが出来ずに私は顔を背けた。
これ以上彼を見ていれば、私の目は濡れてしまいそうだったから…。
―――私の右手はかろうじて木に掴まったまま。
だけど私の目は確かに見ていた。
激しい濁流に流され、私の元から離れていく二人の姿を…。
お父さんと…
司…
―――彼が私の唇にその唇を重ねた。
柔らかい…。
私の目からついに涙が頬をつたった。
彼は私の初恋の人。
初めての友達で初めて恋をした人。
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