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あの日、あの激しすぎる濁流から守ってくれたのはお父さんと司だ。
私の命の恩人の一人なんだ。
「こんな…ボロボロの…約束を…守ってくれて…ありがとう…。迎えに…来てくれて…ありがとう…」
生温い風が吹き抜ける。
夏の匂いが混じる風。
「瑠璃…いつでも見守ってるから…。進もう…」
繋がれた手が離れる。
「この一歩は新しい一歩…新しい明日へ繋がる一歩だ…」
私はその右足を一歩前に踏み出す。
「さようなら…司…」
その時、彼の視線を感じた。
その視線は彼であって、でも今の彼のものじゃない。
遙か昔、彼が幼い時のあの視線によく似ていた。
太陽は西の彼方に消えてゆく。
空には微かに幾千もの星が顔を出し始めていた。
私は振り返らない。
向かう先は明日。
まだ見えぬ未来への道。
私は進もう。
彼は側で私を見守ってくれている。
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