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「ふぅ」
小さく息を吐き、ふと空を見上げてみる。
木々に遮られ、チラチラとしか見えないが、空は蒼茫とした青空。
青空の下で狩りをして、ご飯を食べて床に着く。こんな毎日に、僕は飽きていた。
小さな村のため学校もないし、同年代の子供はいるけど友達じゃない。
剣術も好きで覚えたわけじゃないから楽しくない。
唯一の楽しみは、夜中の読書だけ。
「はぁ……」
最近、一日に五十回以上はする溜息を吐いたそのとき、耳鳴りのような甲高い音が僕の耳朶を打った。
唐突に起きたその現象に、僕は驚き立ち上がる。
まるでガラスを釘の先端で擦るような音だが、明らかにおかしい。
まず、グラスすらも割りそうな大音量なのに、山の動物達が騒がないことからしておかしい。
僕は休憩を諦めて山を下るため、鹿を背負い直した。
そして駆け出そうとした瞬間、右足首を何かに掴まれた。
転びそうになったが、踏ん張ってなんとか耐え、足を掴んだものを見て驚愕する。
地面から人の手が生え、僕の足をガッチリと掴んでいたからだ。
「え、な、なにこれ!?」
叫ばずにはいられなかった。こんな魔物みたことも聞いたこともない。
けど、次の瞬間には叫ぶなんてことすら忘れてしまう。
地面から生えた手が地面に引っ込んでいく。その手と共に僕の足まで地面に引きずり込まれていくからもうパニックだ。
例えるなら本に栞を挟まずに閉じてしまったときみたいに……。
いや、なんて馬鹿な例えを出してるんだ、僕は。
と、とにかく、それくらいに慌てている。
「ち、ちょっと待って!!」
勿論、待ってくれるわけがない。
僕の体はあっという間に地面に呑み込まれ、それと同時に意識も手放した。
耳鳴りは、最後の最後まで鳴り響いていた。
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