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僕にとって幸運だったことに、いや、最初からそれを計算に入れていなかったと言えば嘘になるけれど、彼女は秘密主義者だった。
恋人の話を周囲に吹聴するような子じゃなかったんだ。
僕と彼女は、お互いの大学の友人たちに、ほとんど強引に連れていかれた合コンで知り合った。
お互い、合コンなんて場を好む質じゃなかった。
だから出会ったその飲み屋で、僕らはほとんど言葉をかわすこともなかった。
逆にそれが、彼女を僕にひきつけたのかもしれない。
その場に明らかに馴染めずにいた僕に、彼女は自分との共通点を見出だしたのかもしれない。
僕らは時々デートをする仲になっていった。
彼女が僕に夢中になるのに、さして時間はかからなかったよ。
おとなしそうな女の子にありがちだろう?
一度火がついてしまうと、坂道を転げ落ちるように落ちていってしまう。
落ちていく先がどことも知らずに。
そうして彼女は、いとも簡単に僕の腕の中に落ちてきたんだ。
盲目的に僕を愛する彼女を、僕は可愛く思った。
僕はまるで愛玩動物のように、彼女を可愛がったんだ。
人間の、ひとりの異性としては、高校の頃、自分から遠ざけた彼女のほうが、よほど愛していたと思うよ。
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