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君がきれいに爪の手入れをするたび、僕がその爪を一枚ずつ剥がして、その白い指を血に染めてやりたいと思っていたこと、知らないだろう?
ベランダの植木鉢を荒らしたのが、野良猫じゃなくて僕だったこと、知らないだろう?
ベッドの中で、僕がいつも、のけぞる君の細い首をへし折ってしまいたいと思っていたことも、知らないだろう?
一度だけ、セックスの最中、僕が君の喉に手をかけたことがあったね。
君は悪ふざけだと思って、身をよじって笑っていたけれど、あれは僕の本当の願望の片鱗が、顔を出しかけたんだ。
知らなかっただろ。
いや、もしかしたら、君は全部見抜いた上で、とぼけ通していたのかもしれないね。
僕は時折、そんな気がしたものだよ。
出会った頃、君は言っていたね。
自分の容姿に自信がないと。
だから他人のことも、顔立ちの美しさなんかじゃなく、内面の美しさを見る術を身につけていると。
僕は君の言葉を信じたよ。
だから何故、君がいつまでたっても僕を部屋から追い出さないのか、不思議でならなかった。
君の目に、僕はどう映っていたんだろう。
ああ、僕はあんなにも君のそばにいたのに、そんなことさえ直接訊いてみることもしなかったんだね。
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