麗しの君へ

5/24
前へ
/24ページ
次へ
今思い返せば、それも少し納得できる。 きっと僕は子どもの頃、年齢不相応におとなびていたから、おとなになってからはいっそ子どもじみていたんだろう。 肉体にも精神にも、成長期があるからね。 僕は早くに成長しすぎて、肝心のおとなになってからは、それがぱったり止まってしまったんだろう。 いや、失われていた子ども時代を、おとなになってから急速に取り戻そうとしたのかもしれない。 だからきっと君は、僕が実年齢以上におとなに見えたことなんか、一度もなかっただろう? でも本当は、彼女たちはまちがっていた。 僕はちっともおとななんかじゃなかったんだ。 僕はただ、自分を偽ることに忙しかっただけなんだ。 おとなというのは、自分の感情や欲望を理性で抑えることを覚え、社会性を身につけた人間のことだろう? たぶん。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加