麗しの君へ

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ああ、誤解しないでくれ。 僕はそんな犯罪者たちを擁護しようっていうんじゃない。 そんな人間の被害者となってしまったひとたちに、心から哀れみを感じるよ。 生まれた瞬間から悪の種をまかれている人間は、きっと生きているべきじゃないんだろう。 生まれてしまったことが、そもそも間違いだったのかもしれない。 はじめに書いたとおり、僕はずっと、身内に闇を抱えていた。 物心ついた頃は、まだそれは、ほんの小さな染みくらいだったと思う。 自覚もなかった。 いや、あったのかな。 あまりに幼かった頃の記憶は、はっきりしない。 けれど幼稚園に入った頃には、すでに違和感のようなものには、ちらほらぶつかるようになっていた。 その幼稚園に、僕はとても仲良しの女の子がいた。 もう名前さえ忘れてしまったけれど、その女の子は僕の家の近所に住んでいて、幼稚園の外でもよく一緒に遊んだ。 彼女の一番のお気に入りは、公園の砂場でする「おだんご作り」だった。 ちょっと水を加えてね、小さな手でまあるく、幾つも幾つも砂の団子を作っては、ひとつずつ丁寧に並べていくんだ。 僕はたまに、彼女を喜ばせるために、おいしそうに食べるふりをしたよ。 彼女が作る団子は、どれもほぼ同じ大きさで、とてもきれいなまんまるでね、僕は時々、靴の裏で思いきり踏みにじりたくなった。 そんなことをしたら、彼女はきっとすごく泣くんだろうなあと考えては、よけいに踏み潰したくなったんだ。 おかしいだろ? 僕は彼女のことが大好きだったはずなのにね。
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