34人が本棚に入れています
本棚に追加
団子作りに夢中の彼女の傍らで、僕は山を作っていた。
山の形は、僕の頭の中にくっきりした姿で浮かんでいて、少しでもそのイメージからずれると、何度も何度も作り直した。
出来上がると、今度はトンネルを慎重に掘っていくんだ。
もちろん、トンネルもイメージどおりじゃなきゃダメだ。
そうして、うまくすると、頭の中にあったそのままの山とトンネルが完成する。
僕はそれを、うっとり眺めるんだ。
色んな角度からね。
誰かがちょっとでも手を触れようとするのも許さなかった。
そしてね、周囲が呆気にとられるほど唐突に、完璧に仕上げたその山を、乱暴に蹴り飛ばして無惨に破壊するんだ。
跡形もなくなるほど。
その瞬間の快感は、なんとも説明のしようがない。
誰にも指一本ふれさせたくないほど大切なものをぶち壊す、その瞬間の、喪失感と解放感。
君にわかるだろうか。
最初から壊すために、そんなにも熱心に作るわけじゃないんだ。
そこが一番説明しがたいところだけど、作っている最中は、本当に、ただ純粋に自分が思う形を追求して、一生懸命なだけなんだ。
望むものが完成して、それを眺める時、僕は心から幸福なんだ。
けれどその幸福感が大きければ大きいほど、破壊願望も強まる。
大切なものほど壊したい。
そんな大袈裟な言い方をしなくたって、幼稚園児が作った砂の山なんて、壊せばいいさ。
いくら作ろうと壊そうと、たいした事じゃない。
だけどそう、成長するにつれて、砂の山なんかじゃすまなくなっていったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!