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沙織が、コップを取り出して注ごうとすると、
「あっ、いいよ俺が注いであげるから。」
「すみません、色々と。」二人の行動にママが、
「かっちゃんはアホやねぇ?客がそこまでするのはキャバクラくらいやわ。」
裕也は、即座に切り返した。
「店員と客として飲んでもつまらんやろ?人間同士、腹を割って会話した方が面白いし。」 裕也の言葉に沙織は、すごいと思った。しばらく飲んでいるとママが、
「佑美、片付け手伝って?沙織ちゃんは、かっちゃんの相手をしていてね?」
その言葉と同時に目で何かを訴えているのを沙織は感じ取った。
「加藤さんは、地元の方ですか?」
「生まれてから今日まで、ずっとここにいるよ。隅から隅まで知り尽くしたね~。沙織ちゃんがうらやましいよ。」
沙織は、番号を聞き出す口実を作ろうと必死に考えながらしゃべっている。
「まだ二年しか経ってなくて、知らないところいっぱいあるんですよ。どこかオススメはありますか?」
裕也は、しばらく考え込み口を開いた。
「大型デパートくらいかな?そこは、映画館とかあって一日いられるよ。行ったことない?」
「ないですよ?映画かぁ。見たいけど行ってくれる人がいないから・・・」
「そうなんだ!俺も今見たい映画あるから今度一緒にどうかな?」
沙織は心の中で、
―やった!番号聞ける!―
と叫びながら、
「是非、一緒に連れていってください。良かったら番号教えていただけませんか?都合の合う日が分かったら連絡したいので・・・」
裕也は胸ポケットから携帯を取り出して番号を見せた。沙織は、しっかりとメモリーした。 ママは、奥の部屋から見ていて終わったのを見計らってカウンターにでた。
「はい、お二人さん終わりですよ~!かっちゃん、7千円払って帰ってや?」
裕也は、財布から7千円を取り出してママに渡すと、
「じゃあ、また!沙織ちゃん、楽しみにしてるね?」
そういうと店を後にした。ママは沙織の肩を叩き、
「パーフェクトや!でかしたわ、沙織ちゃん。次はデートやな?頑張り!」
沙織は否定したが、今日の裕也の何気ない優しさに何かが心の中に芽生えようとしているのが分かっていた。
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