望まれぬ双子

2/6
前へ
/169ページ
次へ
「ユカの好きなクッキーだよ。早くおいで。」 母が優しく私を呼ぶ。 「わかったー。今行く。」 私は急いで母の元へ向かった。 「おいしい。」 やっぱりお母さんのクッキーが一番だと、今日も思った。 だがこれが私にとって、人生で一番おいしいクッキーとなってしまった。 私の名前はユカ。世間からみたら、ごく普通の家庭で生まれた子供。 ただひとつ違うとしたら、私は望まれず生を受けたこと。 両親は、店を継がせるため男の子を望んだ。 しかし、生まれてきたのは、姉のマリ。そして、マリと一緒に産まれた私。私たちふたりは、双子。 もともと、望まれない子供。妹の私はさらに望まれない子なのは間違えなかった。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加