笠井さんの木曜日

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あぁ…今日も居てくれた。 レジ台を挟んだ向こう側から柔らかな笑顔で出迎えてくれる彼女。 胸元にあるネームプレートで名前は確認済み、『さいとう』さん。 いつもの通りお決まりの発泡酒と季節限定のチョコを手に取る。 さいとうさんに俺をアピール出来る時間は会計する間のたった76秒ほど。 貴重な彼女との時間を他の客に邪魔されたくない。 だからチョコを選んでいるフリをしながら、レジが空くのを待つ。 タイミングを見計らい、ゆっくりと彼女が立つレジへと歩み寄る。 「いらっしゃいませ」 コンビニ店員らしくない満面の笑顔で、品物を受け取ってくれる彼女。 一瞬、触れた指先の感触に心底に住む‘煩悩’という自分が赤面してのた打ち回る。 しかーし!化けの皮(スーツとも呼ぶ武器)を被る24才の自分は動揺なんておくびにも出さない。
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