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私は、市立病院へ走った。
いや、本当は歩いたのかもしれないし、車で来たのかもしれない。
とにかく、気付いたら知らない病室の前。
入院している人がいる病室とは、全く雰囲気違う気がする。
「…悠嘉」
後ろから、お母さんらしき手が私を病室の中に押した。
スライド式の扉を開け、一歩踏み入れた瞬間、異様な空気に包まれた。
言うならば、涙を空気に溶かしたような……。
ジトッとしていて、哀しみしかない場所。
「あっ、悠嘉ちゃん…」
桜太のお母さんが、私を見て少し顔をあげた。
目はすでに充血し、ひどく腫れている。
「桜太…は?」
一番気になって、一番聞きたくないこと。
どうなったかなんて、知ってるはずなのに。
私は桜太のお母さんの口から、残酷なことを聞き出そうとする。
「…ここよ」
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