第四章

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そして攻守を交代し、次は福留がマウンドへ上がる。 そして渉が打席に立ちそれを迎え撃つ。 福留が第1球を投げた。 (よし、ボールや) そう思った渉はバットを振らずに見逃した。 しかし 「ストライーク!」 後ろで審判をしていた小山部長が叫んだ。 「そんなアホな 今のはどう見てもボールやろ」 渉が抗議をする。 「いや、今のはアウトローギリギリのストライクだよ」 小山部長が言った。 そう言った小山部長も少し残念そうな顔をしていた。 続けて第2球を福留が投げる。 フォアボールに何の意味も無いと考えた渉は思い切りバットを振った。 しかし結果は空振り。 今度は内角低め。 普通の人ならばまず手を出せずに見逃してしまうコースだ。 「何ちゅうコントロールや・・・ こんだけの速さでここまで正確にコース突かれたら打てっこないやんけ」 「アイツは決してコントロールがいい訳じゃない むしろ悪い方だ 俺はど真ん中にしか構えてないぜ? けど奴はコントロールが悪いから何処に球が来るのかキャッチャーの俺にもわからない まぁ奴自身がど真ん中を狙って投げてくれてるお陰でストライクは入るがな」 富岡が言った。 (狙ってないやと 信じられへん せやけど2ストライクで追い込まれとる以上次は何としても当てなアカン せやないと・・・負ける) 渉は気合い入れた。 そして福留が第3球を投げた。 渉はそれをよく見極め、バットを振る。 「かっ、空振り・・・」 隼斗が呟く。 ボールは渉の振ったバットの真上を通り過ぎたのだ。 「ファール!」 審判をしていた小山部長が叫んだ。 「何だと!? 今のは明らかに空振りだろ」 富岡が抗議する。 「いや、今のは確かにファールだった 大貫のバットは僅かにだがボールにかすっていた 音もしたのに聞こえなかったのか?」 小山部長が言う。 その判定には振った本人である渉自身も驚いていた。 しかし小山部長の判定は正しかった。 確かにバットにボールはかすっていたのだ。 「さぁ、カウント2ストライクから再開だ」 小山部長が言う。
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