第四章

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続く第4球を福留が振り被り、投げた。 渉は無我夢中でバットを振る。 すると今度はハッキリとバットがボールに当たった音が聞こえた。 渉の打ったボールは後ろのフェンスに当たりまたしてもファール。 その後の第5球、第6球もファールだった。 しかし徐々にタイミングが合い、ボールも見えてきていた。 そして第7球。 奇跡的にも渉のバットが福留の投げた球を完全に捕えた。 渉の打った球は真っ直ぐと伸び、フェンス手前で落ちた。 惜しくもホームランにはならなかったが三振を取られずに渉の1打席目は終了した。 そして再び隼斗がマウンドへ上がる。 既にホームランを打たれている隼斗の心はさっきよりも落ち着いていた。 一度打たれてしまえばそれ以降は何本打たれても変わらない。 もうホームランを打たれてはいけないと思わずに済む分気が楽になったのだ。 そして隼斗が全力で投げる。 それにタイミングを合わせる様に富岡がバットをふる。 さっきと同じ様にいい音が響く。 「ファール!」 富岡が打った打球は少し左に反れ、ホームランにはならなかった。 (ファールだと? 今のは完全に捕えた筈だ 一体どういう事だ?) 富岡は自信があっただけに混乱した。そして第2球。 富岡は再びバットをボールに当てたが、それは真上に上がり渉がキャッチ。 ただのキャッチャーフライとなった。 そして攻守交代。 福留が再び投げ、渉がそれを打つ。 徐々にタイミングのあってきている渉は初球から何度もファールを連発した。 既に福留のボールを空振りする事は無い。 そしてこの打席10球目となるボールを渉は見事に打ち返した。 速い打球は福留の横を抜けライト方向へ2ベースヒットとなった。
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