第四章

12/13
前へ
/71ページ
次へ
「さて、富岡はホームランを打ったし大武も三振を取った 後は福留が三振とるか大貫がホームラン打つかのどっちかだな この打席、勝負が着くまで続けるぞ」 宮越が言った。 「そろそろケリ着けようやんけ、先輩 この打席ワイが必ずホームランを打つ」 「打たせねーよ お前は俺が打ち取る」 福留も渉も気合いは十分だった。 そして2人が構える。 隼斗には渉がホームランを打つ事を願いただ見守り事しかできない。 「隼斗、絶対勝つで」 渉が呟く様に言った。 ベンチにいた隼斗には勿論聞こえていない。 しかし勝ちたい気持ちは隼斗も同じだった。 そして福留が初球を投げた。 それを渉が打ち返す。 打たれたボールは又してもファール。 そして続く第2球、第3球もファール。 「妙だな」 宮越が言った。 「妙って、一体何がですか?」 隼斗が訊く。 「大貫の奴はさっきから何度も福留の球を打って既に慣れてきている筈だ なのにどうしてこうもファールを連発するんだ?」 「たっ、確かに・・・ どうしてでしょうか?」 「俺が思うに、奴はわざとファールしてるんだ 福留に多く投げさせて疲れさせる事で自分がより打ち易い球が来るのを待ってるんだと思う」 そう話している側から渉は又してもファールした。 福留は既に合計百球近く投げていた。 息が上がり、疲労しているのを隠せない様子だった。 疲れながらも福留は投球を続けた。 既にこの打席だけで15球目だった。 完全に疲労していた福留の球はど真ん中のストレートへ甘く入った。 「待っとったで ワイはこの球を待ってたんや!」 渉の球が完全に福留の球を捕えた。 渉の打った球はどんどんと伸びていき、遂にフェンスを越えた。 渉は遂にホームランを打ったのだ。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加