第二章

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「え~と、野球部、野球部っと・・・」 彼は校内マップを見ながら自分の現在地と野球グラウンドの場所を確認し、その経路を記憶する。 「あれ?君も野球部入部希望者なん?」 彼の背後から声が聞こえた。 振り返るとそこには1人の少年がいた。 身長は彼より高く、体格もがっしりしていて逞しい印象を受ける。 「君もって事はそっちも?」 彼が問い掛けると少年は大きく頷いた。 「せや、自己紹介がまだやったな ワイの名前は大貫渉や 以後よろしくな」 とても陽気な感じの自己紹介だ。 「俺の名前は大武隼斗 俺は父親の転勤でこっちに来たんだけど、もしかして君も?」 「そうや ようわかったな?」 渉が不思議そうに言った。 「だって・・・その話し方じゃ関西の方出身ってバレバレだよ」 「ハハハ、言われてみれば確かにそうやな ワイ、今度から隼斗って呼ばせてもらうわ だからそっちもワイの事渉って呼んでや」 「OK ところで渉も中学で野球やってたの?」 隼斗達はグラウンドへ向かって歩きながら話している。 「おう、ワイは中学時代はキャッチャーやっとったんよ で5番を打っとった まぁ、大して強いチームやなかったけどな」 渉が笑いながら言った。 「本当に!? 凄い偶然、俺はピッチャーだったんだ 入部したらバッテリー組めるかも」 「ホンマかいな 組めるに決まっとるやんけ ワイは4番を目指す だから隼人はエースナンバー目刺しや」 この言葉は隼斗の胸に深く突き刺さった。 隼斗は自分に絶対の自信なんて無い。 エースになろうなんて考えてもいなかった。 ただ隼斗は試合に出してもらえる様に頑張る、それだけだった。 けど渉は違う。 渉は本気で4番を目指している。 正捕手の座もこのチームの中心になろうとしているのだ。 そんな人間と自分は本当にバッテリーを組めるのか? といささか疑問に思うのであった。 「隼人はMAXどの位なん?」 渉が隼斗の球速について尋ねてきた。 「MAXは140位かな」 隼斗は自信無さげに言った。 高校野球で140もあれば中々速い方だろう。 地区大会を勝ち上がるのも夢ではない。 しかし、甲子園ともなれば話は別だ。 それ位の球をなげるピッチャーなんて沢山いるし、それ以上速いピッチャーも色々な球種を持つピッチャーもいる。 そんな中では自分斗のピッチングなんて点で大した事無いと思ったのだ。
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