誘拐

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辺りは暗く不気味な木々がこだましていた。 あれからもう5時間… 二人はずっと歩き続けていた。 「いい加減にしろよ…ウルフにゴブリン、もう見飽きたっての! どっかに人はいねぇのか」 事実もう7回くらいモンスターに襲われていた。 最初こそ初めての戦闘の感覚にスリルと興奮で楽しめていたが、そろそろ休みたいところだ。 零「あ、人だ」 「そうか、人か…ってえぇ!?」 零が淡々と言ったので危うく流すところだった。 見ると男の子が魔物に襲われている。 「チッ…助けるぞ!!」 二人は走る。 しかし間に合わない ウルフの牙が少年を襲う! 『“飛蓮”』 一瞬目の前が真っ白になる。 気がつけば刀を振っていた。 振り下ろされた刀からは紅い斬撃がモンスターに向けて放たれていた。 『ギシャアア!?』 モンスターは叫びながら跡形もなく消える。 「い、今のは?」 隣を見ると零がすごく驚いていた。 零「すっ…す、す、すごいじゃない!もう剣技が使えるなんて!!」 零が興奮している。 だが… 「いや、俺にも何がなんだか…」 感覚は覚えているが、実際手は勝手に動いた。 そういえば最初の戦闘の時もそんな感覚だったが、あの時より確実にハッキリと…手が自分の意思から離れた感じがした。 急に自分じゃない何かに身体を支配される感じに恐怖をおぼえる。 (まぁ考えていてもしかたねぇか…) ふと、忘れかけていた存在に気付く。 「そうだ!男の子は!?」 思い出して少年の方に目をやると、すでに零が駆け付けていた。 「…大丈夫か?」 少年「は、はい。これくらいなら…その…、助けてくださって…ありがとうございます」 少年は動揺した様子もなく、力無くそう言うと立ち上がる。 少年「その、お二方は旅の方ですか?」 はにかんだように尋ねる。 「まぁそんなところだな」 好きでしているわけでもないが…。 少年「あ、僕はロンといいます。もし泊まる場所にお困りでしたら、ご迷惑でなければお礼がしたいのですが」 「…どうする?」 零「まぁこのまま迷うよりは…ね」 ありがたく泊めて貰うことにした。
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