誘拐

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そこは山の中の小さな村だった。 町には年寄りが多く、若い人は殆ど見当たらなかった。 お婆さん「…旅のお方かえ?」 ロン「あ、はい。こちらは蓮さんと零さん、魔物に襲われた所を助けていただいて―――」 お婆「悪いことは言わん、早々にこの村を立ち去った方がいいぞよ」 ―――??? いきなり何言うかと思えば… (歓迎されてねぇのかな) ロン「お困りのようですし、一晩だけですよ」 やはりロンも何か隠している…。 (というより、この村には何かあるな) ロン「僕の家はここです。」 そこは村の中でも外れにある、小さな家だった。 零「ロン君は1人で住んでいるの?」 ロン「いえ、妹がいます。両親は幼い頃死んでしまったので」 零「―――っ!?…そっか、嫌な事思い出させちゃったね」 ロン「いえ、その分妹がいればがんばれますよ(笑)」 また少年ははにかむような笑みを浮かべる。 そんな会話の中、蓮は複雑な思いでいた。 (こいつも両親を…) 蓮は15まで孤児院で暮らしていた。 家は残っていたが、育てる人がいないとまずかったからだ。 そんな蓮だからロンの大変さを誰より身に染みて感じていた。 (俺は独りだった。それはとても寂しいものだったけど…自由ではあった) それなのに―――。 それなのにロンは妹の分まで頑張って養っている。 蓮は自分にはとてもできないことだと思った。
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