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「おはようございま~す」
担任の中村先生が教室に入って来た。
「先生~!
桃チャンがランドセルで
来ていま~す!」
後ろの方で、誰かが先生に告げた。
母が作ってくれた、お弁当を膝に置き、また俯いた。
涙が、お弁当の上にポトリと落ちた。
「あらあら…
岸川サン?間違えたんやね?」
中村先生は、クスクスと笑いながら私の席に近付いて来た。
「岸川サン…?大丈夫よ!
先生のリュックを
貸してあげるからね~」
そう言い、私の頭を撫でてくれたんだ。
《貸してくれる?良かった!みんなと一緒だ!》
パッと顔をあげ、涙を拭いた。
私がリュックを持ってないとは、誰も思わなかった。
間違え…
間違いは誰にでもある…
そう、クラスメートは思ってくれた。
私が、小1で学んだ小さな知恵だった。
「さ~みんな~
校庭に出ますよ!
荷物を持ちましょう!」
先生の合図に、みんなはワイワイと教室から校庭に出た。
最後に残った私に、先生は自分のリュックから荷物を出して、私に貸してくれた。
「ゴメンね…
ちょっと大きいけど…」
そう言いながら、私の肩をポンポンと軽く叩く。
先生と一緒に校庭に出た私は笑顔だった。
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