~桃子の生い立ち~

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真っ白なご飯の真ん中に、真っ赤な梅干しが1つ… そして… 焦げた、いびつな玉子焼きが隅っこに置かれてる。 隣の武クンや紀代美チャンのお弁当を見た。 フリカケや海苔の巻いたお握り、タコサンウィンナー、ウサギの林檎、黄色い玉子焼き、ミートボールに唐揚げにサクランボ… 彩り良く、綺麗なお弁当が見えた。 私は、両手に持ったままの、お弁当の蓋を…閉じた。 《恥ずかしい…》 初めて感じた、砂を噛むような感情。 きっと、私は真っ赤な顔をしてたに違いない… どんな言葉も見つからなかった。 大粒の涙が、私の瞳から落ちた。 私は一人駆け出し、滑り台の陰に隠れたんだ。  《なんで…私は皆と一緒の事が出来ないの…?》 《皆のお母さんは…特別なの…?》 私の落とした涙が、地面に水玉模様を作ってた。 遠くで、先生が私を呼ぶ声が聞こえた。 私の涙は止まらなかった。 大人になっても、この時の 《私》が夢に出て、泣きながら目が覚めた事が、何度もあった。 忘れられない、辛い思い出。
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