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「巫女、ですか」
「ええ。レイ、ビローさんを案内してあげなさい。頼まれた物があっただろう?それもついでに渡してこい」
「はーい」
レイは立ち上がって棚の上にある袋をつかみ、ビローに言った。
「ついてきて!」
村の住宅地から少し離れたところに、大きめな小屋があった。村の建物と違い、木造だった。。
木々が鬱蒼と覆い茂る大きな中庭がある。小さな畑があり、そこに二本のタポルの木が植えてあった。緑と赤の小さな実が、一つずつ実っている。
「ミーナ!」
レイは小屋のドアをどかどかノックし、大声でその巫女らしい人物の名前を呼んだ。
「レイ、どうしたの?」
背後から声が聞こえ、ビローは素早く振り返る。
そこにいたのは、
「君は…」
さっき村までビローを案内してくれた金髪碧眼の少女だった。
「あ、さっきの剣士さん。こんにちは」
少女は柔らかな笑みを浮かべて言った。
「あれ?ミーナ、お店だったの?」
レイが少女に駆け寄る。
「うん。タポルの実がね、たくさん採れたからあげに行ってたの」
ミーナと呼ばれた少女は、レイにそう言った。
「ところで、なにか用だった?」
ミーナはレイとビローを交互に見てそう尋ねる。
「そうそう!村の巫女様に聞きたいことがあるのよ!」
レイが楽しそうに言うと、ミーナは苦笑を浮かべた。
「その言い方よしてってば」
「巫女なのにはかわりないでしょう?」
「まあ…そうだけど」
「…巫女なのか…?君が」
ビローがおずおずと尋ねると、ミーナはかごを体のまえに両手で持ち、笑顔で言った。
「はい。わたしがこの村の『炎の巫女』の、ミーナです」
「自分はビローだ、よろしく。…しかし、巫女にしては若いんだな」
「ええ。十四年前まで母が巫女だったんですが、母は事故で亡くなってしまって…。だから娘であるわたしが母の遺志を受け継いで、巫女の役をすることになっているんです。いまはあの家で一人で暮らしてます。…っていっても村の人達がいつも一緒だから一人暮らしって言えるのかどうかわかりませんけど」
ミーナは楽しそうに、しかしその中に寂しさを滲ませて言った。
「…立ち話もなんですから、どうぞ入ってください」
ミーナは小屋の鍵を開け、二人を招き入れた。
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