第一章:四つの国の境にある村

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部屋の中は常に掃除をしているようで綺麗だった。 広いリビングルームには小さなソファと椅子と机。本棚には絵本や魔術関係の本が入っていた。大きな暖炉があり、真夏に関わらず最近使われた形跡がある。 リビングの向こうにはキッチンがあり、その脇に扉が三つある。 そしてそのリビングの机の上に、小さな竜がいた。 「……」 ビローはその竜と目が合った。 紅い皮膚に金色のたてがみを持つ竜である。フレイムドラゴンと呼ばれる、神の守護竜。 竜には守護竜と呼ばれる特別な存在がある。竜だけでなく、神に仕える魔獣、守護族がいるのだ。早い話が神の側近である。 そんなたいそうな竜の子供が、何故こんなところにいるのだろうか。 「…ミーナ、どうしたのよ、この子。あなたもとうとうたいそうな竜を頂けたの?」 レイがドラゴンを指差して言った。 「ん?ううん。前にタポルの実を採りに行ってたら怪我してたのを見つけて、手当てしてあげたら懐いちゃったの。おじいさまのところに返さないといけないんだろうけど…、はなれがたくなっちゃって」 ミーナは困ったように首を傾げてつぶやき、フレイムドラゴンのたてがみを優しく撫でてやる。 気持ち良さそうに目を細めるフレイムドラゴンを見つめて、ビローはとてもこいつが守護竜には見えないな、とこっそり思ったのだった。 「とりあえず、どうぞ座ってください」 ミーナはそう言って、ビローは背負っていた剣を脇に立て掛けて椅子に腰掛ける。 「レイは?」 「あたしは頼まれたものを持ってきただけだから。すぐ帰るわよ。はい」 レイは持ってきていた布袋から野菜を取り出し、ミーナに渡した。 「ありがと。そうだ、もう一つ頼まれてほしいんだけど」 「んー、なに?」 ミーナは机の上でビローをじっと見つめていたフレイムドラゴンを抱き上げ、レイに渡す。 「この子のお守り、してほしいの」 「……マジ?」 「うん。しばらくの間でいいから。このあとちょっと絵、描きたいから。絵描いてるときこの子がスケッチブックの端っこ噛むんだ」 レイはそんなミーナに苦笑いを送り、しかたないなー、と言って承諾した。
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