8人が本棚に入れています
本棚に追加
レイが帰っていき、ミーナとビローの間に少しの静寂が訪れていた。
「…あの、それでお話って…?」
「あ、ああ。すこし君に聞きたいことがあってね」
「なんでしょう」
ミーナはビローの向かい側に座る。
「"魔王の剣"のことを、何か知らないか?」
「…"魔王の剣"…ですか」
「ああ、神の力を借りて初めて出来上がると言われる伝説の剣だ。この村は昔から火の神に守られていると噂に聞いた。だから、手掛かりが得られると思って俺はきたんだ」
「その伝説の剣が、ほしいんですか?」
「ああ。西と東の戦を終わらせるためにな」
ビローは軽く目を伏せて言った。
「俺は、ガキの頃から王に仕えていて、王には忠誠を誓っている。だからこそ…ってわけじゃないが、俺は王の命令を果たすことが義務だ。守るべき方を守る。だから、その剣が必要なんだ。戦争が本格的に始まる前に、見つけなければならないんだ」
「……」
ミーナはビローをじっと見つめ、小さくため息をつく。
「…西と東の戦争のことは聞いています。でも、その剣が何を果たすんですか?」
「相手は魔族なんだ。正確には、東は異界から魔族を召喚している。そうしないと、東は西には勝てない。その剣は、人間には効かないらしい。そのかわり、魔物や神さえも殺してしまえるらしいんだ」
「…戦力がないのに、なぜ東はわざわざ魔族を召喚してまで西と戦争をしようとするのですか?」
そう尋ねたミーナを、ビローは見据え、
「西には、火の魔物、地の魔物が多く生息している。そして、二種の魔族は西の象徴になっているんだ。そして、東は水と雷の魔物が多くいる。その四種のうちの二種、火と水が十四年前、滅びあうほどの争いをしたんだ」
「…知ってます。火の女神が命を落とした事件は村にも情報がきてますから…」
ミーナは呻くように言った。
「火の女神アグニは、西へ調査に向かいました。そのとき、水の女神ネプチューンと戦うことになったそうです。それから、アグニは村にも、火の神の住み処である『竜王の山』にも戻っていません。記録では、ネプチューンに殺された。と書いてありました」
「…ああ。それに激怒した王が、水神を殺す命令を出した。それを東が黙ってるわけもなく、いつしか二つの国の間の戦にまで発展した。…しかし、詳しいんだな」
ビローが感心してつぶやくと、ミーナは小さく頷いて口を開きかけて、やめた。
最初のコメントを投稿しよう!