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次の日の朝、空はいつも通り晴れ、活気ある村人の声が響いている。
ビローはレイの家に泊まらせてもらっていた。
「おはよう」
「あら、ビローさん。おはよう」
朝食の準備をしていたレイは、いつもと変わらぬ笑顔でビローに挨拶する。
テーブルの上には、焼きたてのパンがかごに入り、グリーンベリーという緑の木の実のジャムが添えてある。温かそうな野菜のたくさん入ったスープも二人分置いてあった。大皿には、目玉焼きとカリカリに焼いたベーコンが乗っている。カップの中にはコーヒーが入り、ガムシロップやミルクが脇に置いてあった。
ビローは、とてもいい匂いのするそれらを眺め、椅子に腰掛ける。
向かい側に座ったレイを見て、ビローは尋ねた。
「村長さんは?」
「お仕事。この村にはね、魔法戦士協会っていうのがあって、あたしもそこに三級魔術師として所属しているのよ。ミーナも、二級魔術師として登録してあるわ。父さんはその魔法戦士協会の副会長なの。ただいるだけだけど」
レイはコーヒーにガムシロップをかけて細いスプーンで掻き混ぜ、ミルクを入れる。
「…ミーナは、大丈夫だろうか?」
「…さあ。でも、少しそっとしておいてあげて。火の魔物は、ミーナにとっては家族同然だから…つらいところがあると思うの」
ビローは小さく息を吐いてコーヒーに手を伸ばし、一口飲んだ。口の中にほろ苦い味が広がり、眠気を覚まそうとする。
「ミーナが火の女神だってことは、昨日のことでわかったでしょ?」
「…ああ。火の女神アグニは、ミーナの母親ってことになるんだよな?」
「そうよ」
レイはコーヒーを何口か飲むと、カップを置いた。パンに手を伸ばし、手でちぎって食べ始める。
「つまり、十四年前、ミーナの母親はネプチューンに殺されたってことだよな?」
「…そう。初対面の人には、不慮の事故だって、言うけどね。ビローさんにも言ってたね」
ビローは頷き、コーヒーを飲み干した。
「おかわりいる?」
レイはポットを持ち上げ、ビローは礼を言ってカップを差し出す。
「朝食食べたら、ちょっとミーナの様子見に行く?ビローさんはまだミーナに聞くことがあるんでしょう?」
「…まあな」
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