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「…おじい様…わたしは、どうすればいいんでしょうか」
ミーナは絵を描いたあと、またブレイブのところにきていた。大きな龍を見上げて、深刻そうにつぶやく。
「それは、おまえ自身で決めるがいい。儂のような老いぼれ、なんの力もない。守護竜がいなくなれば、なおさらだ。儂は、この谷から出ることはできん。おまえが何かをしなければ、村も、火族も救われん」
「……」
ミーナが沈黙すると、ブレイブは大きな翼を揺らす。
「フレイムドラゴンの子供…、フレイだったか。そいつは、おまえの守護竜だ。世代交代の時期なのだ」
「…わたしは、ビローさんと"魔王の剣"を探そうと、思います。…母を殺した、ネプチューンに会うことになるだろうし」
彼の言葉に、ミーナは自分の考えを打ち明けた。
「それは、おまえが決めることだ」
ブレイブは愛孫を優しい眼差しで見つめてつぶやく。
「はい…」
どさり、という音と同時に、ビローの前に大量の本が置かれた。見上げると、ミーナがにこりと微笑んで言う。
「これが、神や"魔王の剣"関連の資料全てです」
「…あ、ああ。ありがとう」
ビローはコーヒーの入ったカップを置き、分厚い本を持ち上げた。少し表紙がはげているが、そこには数え切れないほどの神の絵と、"魔王の剣"らしき絵が描いてある。本のタイトルは完全に色あせてわからなくなっていた。
この村にきてから三日は経つが、やはり戦のことを忘れてしまう雰囲気がある。実際、ミーナが資料を出してくれるまで忘れていたのだし。
「……」
ビローは本を開いて読み始める。
視界の端に、ミーナがスケッチブックと絵の具を持って外に行こうとしているのが見えた。
『神々と剣。
神々は剣に力を与え、
剣は神々を殺す。
神々は剣の力を奪い、
剣は神々を生かす。
神と剣はどちらも欠けてはならぬ。
神と剣だけでは力は得ぬ。
力の 。 の鏡。 黄 石。
てが わなければ剣は 来上 がらな 』
ビローは本を閉じる。
最後の肝心な部分が虫喰いや日焼けで色あせて、ほとんどわからなくなっていた。
「どうしたものか…」
ビローは小さくつぶやいた。
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