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「この村には、当分戻ってこれないかもしれない。もしかしたら死ぬかもしれない旅だ。それでもいいのか?」
ビローの言葉に、ミーナはしっかりと頷いた。
「構いません」
「…そうか。俺は別に構わない。好きにすればいい」
ビローがそう言って二日後のこと。
「…男子禁制…なんですか?ただ髪を切るだけなのに?」
フレイを肩に乗せたビローはダンテにそう言った。
今、ダンテの家にはお店のおばさんと近所のお姉さんとレイとミーナがいる。殿方は退散願われ、ダンテやビロー、近所の男たちは外で待っているのだ。
「女性の断髪式は、神聖なものでね。昔からの伝統です」
「旅立ちの前に、髪を切るのも?」
ビローの問いにダンテは頷いた。
「ええ。いつかまた、元の長さに戻る頃にこの村に戻って来れるように。昔、若者が町に出るとき親や大人がそう祈りを込めたらしいのです」
「へえ…」
ビローは小さくつぶやき、ミーナ達が出てくるのを待つ。
フレイがふぁー、と欠伸をした。
「あーあ。綺麗な金髪なのに。もったいないなあ…」
レイはミーナの髪の毛を撫でながら言った。金細工のような細く柔らかい髪がレイの指に絡み付く。
「また伸びるんだから、問題ないよ」
ミーナは笑いながら言ったが、それでもレイは惜しそうだ。
「そうだけどさー。あー…でも、ミーナの髪短いのも見てみたいかも」
レイはミーナの髪の毛を撫で付けてわしわしと掻き交ぜた。ミーナの金髪はぐしゃぐしゃになる。
「じゃ、始めようかね」
おばさんはスキバサミを取り出して楽しそうに言った。
「お願いします」
ミーナはやや苦笑しておばさんに任せることにする。
スキバサミがミーナの首筋を通り、シャキ、と音がした。金細工のような髪が、床にはらりと落ちる。
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