第一章:四つの国の境にある村

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ミーナとレイは坂道をのんびり歩いた。雑貨屋を抜けるとみんなが待つ西門に出た。 「ずいぶんと動きやすそうな服だな」 鎧を着て準備を整えていたビローがミーナを見て言った。 「はい。動きやすいですよ。ビローさんの鎧って…動きにくそうですね」 「そうでもないぞ。というか慣れたな」 ビローは大剣をかつぎながら笑う。 「ミーナ、ビローさん、準備出来たかしら?」 近所のおばさんが、ウエストバッグを持ってきて言った。 「はい」 「ええ」 ミーナとビローは返事をし、村の住民が集まる門へ向かう。 「おねえちゃーん!」 門につくと村人のほとんどがいて、ミーナに懐いていた小さな子供たちが抱き着いてくる。 ミーナはさっきもらったウエストバッグを腰に巻きながら、みんなの頭を撫で、抱きしめた。 「寂しくなるけど、元気でね」 それを見てレイは茶化す。 「もてもてー」 それからミーナに言った。 「はい、これプレゼント」 レイはシンプルなイラストが施された紙包みをミーナに渡した。 「これは?」 それを受け取り、ミーナは聞く。するとレイはおどけて、 「見てからの、おったのっしみー。船に乗ったらのんびり読みなさいな。手紙も入れといたから」 軽くウインク。 ミーナは紙包みを抱きしめて、微笑んだ。 「ありがとう。レイ…」 「いいってことよー!」 レイは笑うとミーナの背中をばんばん叩く。 それからぎゅう、と抱きしめた。 「…いってらっしゃい」 「いってきます」 ミーナは寂しそうに微笑んで、レイの頭を撫でる。レイは今にも泣きそうな顔だったが、無理矢理笑顔を作った。 「絶対戻ってきなさいよ!」 村の住民の見送りを背に、ビロー達は歩き出す。 「…フレイも連れてくのか」 ミーナに肩に乗った赤い体と金色のたてがみをもつ小さいドラゴンを見て、ビローは言った。 「この子はわたしの守護竜ですから、当然です。大丈夫、家のことはポーに任せてあるし」 「あの猫が、家を管理?」 「泥棒が入らないように見張りですよ」 ミーナは楽しそうにつぶやく。 「まずは西に戻るんですよね?」 ビローを見上げて聞くと、ああそうだ、と頷いた。 「貿易用の船があるから、それに乗るぞ」 「船…初めて乗ります」 ミーナは小さくつぶやき、鬱蒼としげる森と澄んだ青い空を見上げた。
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