第一章:四つの国の境にある村

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ビローは歩きながらミーナを見た。 「なあ」 「はい?」 ミーナは振り返り、ビローを見て聞き返す。 今、彼らは道なき道を歩いていた。茂みをかきわけて前に進んでゆく。 「…道合ってるのか?」 「ええ」 ビローの不安げな声に、ミーナは微笑んで返した。 「…道じゃないぞ」 「"獣道"ってやつです。何回か港まで行ったことあるんですよ。ポーとか他の魔獣が使ってるみたいです。そういえば、レイとも行きました。そのときははぐれ獣追いかけてたんだっけ」 ミーナはビローの微妙な顔を見て楽しそうに笑うと前を指差す。 「ほら、もう少しです。潮の香りがしてきましたよ」 彼女の言葉にビローは目一杯息を吸い込んだ。微かにだが潮の香りがするような気がするが。 「…半日でつくのか」 「普通の道を通ったら丸一日かかるみたいですけど」 「…それでも一日なのか」 呻くように言うビローを不思議そうに見上げ、フレイと顔を見合わせた。 「…もしかしてビローさん、国境の村につくまで何日もかかったとか…?」 ミーナが遠慮気味に聞くと、さあ行こうもうすぐだあとちょっとだ、と早口で言ってずんずん進んでいってしまう。 ミーナはそんな彼を追いかけながら、楽しそうに微笑む。それはやや苦笑がまざっているようにも見える微笑みだった。 肩に乗っているフレイがミーナに耳打ちする。 「ビロー、迷子になったのかな?」 フレイの言葉にミーナは微笑みを崩さぬまま人差し指を唇の前にあてた。 だんだんと潮の香りが強くなり、突然開けたところに出た。そこは小さな造船所だった。ミーナが港といっていたところ。 ビローは前を見つめ、つぶやいた。 「…船、丁度きたな」 「ホントですね」 ミーナも隣にならんで頷く。 海の上に、大型の貿易船があった。
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