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女性は背が低かった。それに女性というより、まだ少女といったほうがいいような気がする。見た感じはビローより年下に見えた。
金色の背中にかかるほどの髪に、大きな目の中の瞳は透き通った青。
西ウエティアでは見たことがない、髪と瞳の色だった。西ウエティアは髪と瞳共に黒、または髪が黒、瞳が茶色の組み合わせが一般的だ。
服装は、絹の生産村だけあって綺麗だった。村独特の衣装も、なかなか西ではお目にかかれないようなデザインだ。オレンジ色の紐がベージュの布地に編まれているデザインで、靴も動物の毛皮で作ったらしい変わった形のものだった。動きやすいように靴の底はそんなに高くなく、脇には色鮮やかな刺繍がしてある。
そして腰には短い剣が鞘に入っていた。腰の後ろにも短い杖があるようだ。それらにもしっかり装飾が施されている。
魔術師は、杖やその他の媒体を使って魔術師は魔術を発動させる。一級魔導師クラスになれば自分自身に魔力を溜め込むことができ、媒体はいらなくなるらしいが。
しかしたいていの魔術師は見習だった名残で杖を持っている。
この少女も魔術師の必需品を持っているということは、言わずもがな。
少女はビローの視線に気が付き、不思議そうに首を傾げた。彼は少女を見下ろして、尋ねる。
「君は、国境の村の者か?」
「ええ。旅の方ですよね。国境の村に用があるんですか?」
少女はやわらかく微笑み、ビローに聞き返した。
「ああ、ちょっと聞きたいことがあってね。村長に会わせてほしいんだ。案内してくれないか?」
ビローがそう言うと、少女は少し考えるような仕草をし、手に持っているかごを一瞥してから言った。
「わたしは今からタポルの実をお店に持って行かなきゃいけないから村の入口までですけど…。それでよければ」
「ああ。構わない」
ビローは頷き、じゃあ頼む、と言った。少女は頷き、
「はい、わかりました。村に入ったら門にいる警備の方にあとは尋ねて下さいね」
そう微笑んで言った。
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