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少女はゆっくりと"国境の森"の中を歩いた。時折ちゃんとビローが付いて来ているか確認するために振り向きながら。
ビローは透き通る青がたまにこちらを見ることに、なんとなく照れ臭さを感じながら彼女の後ろを素直に付いて行った。
特に会話も交わされず、二人は森から出て草原を歩く。ビローは振り返ってさっき自分がいた丘を見つめた。丘というより、崖である。
視線を戻すと、金色の長い髪が揺れているのが目に入った。太陽の光が反射して、きらきらと光っている。
綺麗だな、なんてぼんやり見つめていると、少女はくるりと振り返り、
「国境の村に到着です。後は詰め所にいる警備兵さんに聞いてくださいね」
そう言うと丁寧にお辞儀をして去って行った。軽い足取りで店らしき建物の中に消えた。
ビローは村を見渡す。
大きな村であるとは聞いていたが、むしろ自然の多い町、といった方がいい。しかしその雰囲気や建物、城壁ではなく動物除けの柵が村を囲んでいるところを見ると、やはり大規模な村である。
地面は建物と建物の間、通路のように石畳が敷いてあり、そこ以外は全て短い草が生えている。花も咲いている。建物は全て土壁で、瓦の屋根。
ビローは小さな詰め所に目を向け、そこの扉を叩いた。
国境警備兵に村長の家まで案内されているとき、ある家の庭が目に入った。
その庭では子供が家畜らしいコカトリを追い掛け回して遊んでいた。
コカトリとは、コカトリスという野生の鶏型の魔獣を家畜用に品種改良したもので、西でもよく食べられる、一般的な肉だ。
村人はやはりあの少女のような独特な色鮮やかな服装で、国境警備兵の鎧やヘルメットも、綺麗な装飾品が施されている。
村の中も平和な雰囲気があるし、西と東の戦のことなど忘れてしまいそうだ。村に入った途端、涼しげな風が吹いた。
快適な村なんだな、とビローは思った。
「ここだ。村長には無礼のないようにな」
警備兵はそう言って敬礼をし、踵を返して村の門の詰め所へと戻って行った。
ビローはドアをノックする。
するとばたばたという音が聞こえ、ドアが開いた。
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