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「ホントは日本語も話せるんだろ?」
放課後を使っての校内案内中。
二人の会話は相変わらずフランス語で行われていたが、不意に晶が言った。
それに対してサラは、
「はい、そうですよ。祖母が日本人でしたから」
悪びれた様子もなく、あっさりと答えた。
晶にもサラの意図は分かる。
いちいち通訳が必要となれば、自分に対する質問はかなり抑制される。
転校初日で、しかも初めて訪れた国なのだから色々と大変なはず。
「まぁ、俺に出来ることなら協力するよ。分からないことだらけだろうから」
晶が転校してきた時も質問攻めはかなりあったが、なにせこの性格である。
あまりに冷めた態度に、クラスメートたちは一気に晶に対する興味を失った。
「ありがとうございます、水谷さん。ご厚意に甘えさせていただきますね」
晶の言葉が本当に嬉しかったのだろう。
案内している間のサラはずっと笑顔だった。
人の為に何かする。
晶にはあまり経験のことだが、進んでしようとしないだけで頼られるならそれには応える。
そして、下校する時間になり、エスコートまがいに街を案内しようとした時だった。
サラは、晶に一つだけお願いをした。
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