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キィィ……
鈍い音をたて、金属製の扉が開かれた。
「随分と上達したな」
扉を開けたスーツ姿の中年男が言った。
「まだまだです。3発ほど掠りましたし、6本も落とし損ねました」
それは謙虚の言葉ではなく、自分に対する確実な評価。
男は「やれやれ」といった感じに溜め息を吐くと、少年に今入手したばかりの情報を告げる。
「ヤツが日本に来るぞ」
男がそう言った瞬間、それまで何にも動じなかった少年が大きな反応を見せた。
「本当ですかっ?! 本当にアイツがっ?!!」
「ああ、信頼できる情報だ。ただ、もう少し先の話だがな」
そう言って、男は持っていた書類を差し出した。
それを受け取った時の少年の表情は、なんとも言えず複雑なものだった。
歓喜でありながら憎悪を感じさせ、その中に不安と自信が同居している。
「ここじゃ見えないだろうから、向こうに行って読め。今日の訓練は終わりだ」
「わかりました。じゃあ、失礼します」
深く一礼して部屋を出ていく少年。
男は少年の背中が見えなくなるまで見送り、その後で残骸が散らばった室内を眺めた。
「とんでもない奴を育てちまったな……」
誰に言うわけでもなく男が呟いた。
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