日本へ

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傍目にも分かるほどウキウキしながら鏡の前に立つサラ。 その手に持たれているのは、これから通うことになる日本の高校の制服だった。 この船に乗っている間、いったい何度こうやって鏡の前に立ったか数え切れない。 制服を体に当てたまま、美しいロングストレートの銀髪を束ねてポニーテールにしてみる。 こうすると、今までの清楚な雰囲気の中に活発性と可愛らしさが加わる。 こうやって制服に似合った髪型を探すのも、ここのところ毎日続いていることだ。 「サラ、用意は出来たの?」 そう言って部屋に入ってきたのは、サラの母親のカスミだった。 フランス人と日本人の混血である彼女は、母親によって日本人に近い名前を貰っている。 赤みを帯びた黒い長髪はサラとは異なった美しさを持ち、それに加えて大人の女性が持ちうる魅力が彼女を引き立てる。 容姿も、サラほどの娘がいるようには見えないほど若々しく、少し大袈裟に言えば姉妹に見えないこともない。
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