乗り越えるべき壁

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車に乗り込む足取りは、とても重かった。 雅はというと 緊張しているみたいだ。 「雅」 「何?」 「何て話すの」 まだ車は発進しない。 地下の駐車場の為、昼前なのに真っ暗だ。 灯りが、雅の表情を隠したり、見せたりする。 「深雪の希望は?」 幾分か声が近くなった気がしていた。 「私は…」 言葉を遮るように、私の右頬に感じる大きな温もり。 思わず身体が反応するのは、癖になっているようだ。 雅はそれを確認したように、空いている片方の頬も包む。 そして軽く重なる唇は、やはり熱く、全身へと伝播するようだ。 「俺のそばに…ずっと一緒に…いてくれるか」 雅は小さく呟いた。 雅の熱さえ、感じるほど、まだ近くにいるみたいで… .
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