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家に入れば、母親がむかえる。
「いらっしゃい」
微笑む母親が、その時ばかりは複雑にも、怖く感じた。
雅は玄関先で
「改めまして、陣内 雅です」
ぺこりと頭を下げる雅からは、紳士な香り。
違和感を感じながら
「突然、ごめんね」
私は母親へ謝った。
母親は、一瞬私を一瞥して、リビングへ入っていった。
―ひぃ~っ!!
雅、大丈夫かな…
元来、穏やかな性格だが芯は通っている母親。
久々会って、弱気になっている私はさらに不安になった。
雅はまっすぐ前をむいていた。
リビングには新聞を読んでいる父親がいて、そのまま
「いらっしゃい、それから…おかえり」
新聞越しに言う父親へ、私は呟いた。
「父さん…久し振り」
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