乗り越えるべき壁

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つばきは黙ったまま、玄関へ静かに訪問者の確認へと向かう。 再び沈黙という、はりつめた空気が支配する。 しかしそれは、あっけなくも、あっさりと崩される。 「母さん、三井さんが…」 つばきの声に、一同がつばきのほうを振り返った。 つばきの後ろには、スーツ姿の三井が立っていた。 「突然お邪魔して申し訳ありません」 まさに腰が直角に曲がるほど、頭を下げた三井。 つばきが一番落ち着いており、三井を中へと手で示し、誘導する。 雅の口は半端に開いたまま、私はどんな顔をしているのか、わからない。 「直入に申し上げますと、今回のお見合いの話を取り消していただきたく、参った次第であります」 雅の隣まできた三井は、私の両親へ、そう伝えた。 「高いところからで申し訳ないのですが、私には大切な女性がいます」 続ける三井の表情は、真剣だった。 .
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