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「ち、遅刻だぁ~!」
トーストを口にくわえたまま家を飛び出した、典型的な遅刻少年の名前は、間森悠紀(まもりゆうき)。
悠紀は、輝かしい高校生活の初日、入学式に遅刻しようとしている。
桜の開花は毎年早くなってきているが、今年は例年よりも遅れていて、いまの時期はちょうど満開のピークの頃だ。
その桜並木の道を必死で駆けていく悠紀。その彼の前には同じように息を切らせて走る少女の姿があった。
「あ…、あの子も遅刻かな?」
悠紀が少女を見ると、彼女もトーストを口にくわえていて、悠紀はなんだか少しだけ恥ずかしくなった。
悠紀がスピードを上げて、少女を追い抜こうとしたときだった。
「きゃッ!」
少女が何もない所で転びそうになった。
「危ないっ!」
悠紀は咄嗟に少女を助けようとして、彼女を抱き抱えたまま、冷たく固いアスファルトの上に倒れ込んだ。
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