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「じゃぁ、私と一緒で完全に遅刻だね。トーストも落ちちゃったし。」
悠紀は少女の言葉にハッとなって時計を見てみたが、彼女の言う通りのようだ。
「ホントだ…」
悠紀は少し考えて、少女とゆっくりと登校することに決めた。
「君…、えぇっと…」
「愛花よ。姫野愛花(ひめのあいか)」
愛花はそう言うと、ニコッとかわいらしい笑顔を見せた。
「俺は、悠紀。間森悠紀ってんだ。よろしく」
愛花の笑顔に、悠紀も思わず笑顔をこぼした。その時、悠紀は今まで一度も感じたことのない想いに胸を締め付けられていた。
「大丈夫?」
悠紀は立ち上がろうとする愛花を支え、心配そうに顔を覗き込みながら言った。
「だいじょぶだよ」
「じゃぁ、行こうか? これ以上遅れると、ホームルームどころか式に遅れちゃうから…」
悠紀は自然に愛花の手を取り、桜並木の道を駆けて行った。
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