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店長は休憩時間でここにはあたしと男2人だけ。
こういう客は目を合わせたら厄介になることを知ってるからあたしは下を向いていた。
足だるい…‥店長休憩長いし。
すぐに表情に出てしまうあたしは、少しむくんできた足を片方ずつ体重かけて片足を休めたり、強まる雨のなか足早に家路を急ぐ残業帰りのサラリーマンをガラス越しに見ていた。
ふと気配を感じたと思うと男がレジの前に立った。
「いらっしゃいませ」
愛想もない声で手動のバーコード読み取り機に手を伸ばす。
1年も同じ作業を繰り返してきたあたしにはこの作業の流れは当たり前のように身に付いている。
「…ない」
いつも置いてあるはずのバーコード読み取り機がそこにはない。
何も考えていなかった頭がさらにフリーズする。
訳も分からず顔をあげるとさっきのチャラ男があたしの顔をまじまじと見つめている。
少し慌てたあたしは、バーコード読み取り機のコードを目で辿っていった。
「君 1つください」
そのコードは、目の前にいるあの男へと繋がり、そしてあたしの胸ポケットについた《柚木》という名札にバーコード読み取り機を当てていたいた。
《あたし》を 1つください…?
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