お客様 私は商品ではありません

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突然のことであたしは何も話せず男と目が合ったまま動けない。 「ねぇ バイト何時に終わるの!?」 何、こいつ。初対面だよね? 左目にかかる前髪をよけるように顔を傾けてあたしの顔を覗き込んでくる。 「噂通り超可愛いね!!!柚木 陽菜チャン」 男は名札に当てていたバーコード読み取り機をさっきより少し強く押した。 「お♪胸も結構ある」 いかにも不真面目そうな髪型に首元がざっくり開いたパンクなロンT。鎖骨をなぞるように飾られたシルバーネックレス。 無神経で非常識。 きっと誰彼構わず女だったらこんな態度をとるような軽い男だろうってすぐにわかった。 まぁ、こいつのことには全く興味はないけれど。 「…お客様?」 「どわっ!!!?」 あたしはカウンター越しに思いっきり男の襟元を掴んで、顔が当たりそうなくらい引き寄せた。
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