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「資本家は見事に落選したね」
「え?ああ…そう」
意外な結果だった。
私はうっかり、その怪しい男がペテン師か何かで、資本家に聖水と称した謎の小瓶を渡した後、何か裏の手を使って、見事に当選させて、わんさか金を巻き上げたのかと思っていた。
「勿論、資本家は男に文句を言いに行った。
“話が違うじゃないか。あんたはこの水を1日一滴ずつ飲んでさえいれば、必ず選挙に当選すると言ったじゃないか”と。
そしたら男は何て言ったと思う?
“私はそんなことは言っていません”と真っ向から否定した。
そして男はこう言ったんだ。
“私はあなたが、本当に政治の道を志す以上、必ず当選を約束すると言ったんです。
あなたが純粋に、地位や名誉など一切関係なく、政治家を志していたなら、あなたは本当に当選していたでしょう。
私はあなたを信用したのに、あなたはそういう人間ではなかった。
何の為に私の元へ来てくれたのですか?残念でなりません。
信じた私が馬鹿でした”だとよ。それでおしまい」
そこまで言って、ギルバートはまたククッ…と背中で笑った。
私もつられて笑ってしまった。
「ちょっ…ちょっと待ちたまえよ。
それで、その珍妙な男は一体何者だったのだ?結局金も取らず、妙な水を渡しただけ。
大の大人をからかっただけかい?
なんなんだ、そいつは一体」
私の問い掛けとほぼ同時に、ギルバートが手にティーカップを持って戻って来た。
私の目前に、長い間放置されていたミートパイの皿を取り上げ、素早く手にしていたティーカップとすり替える。
そして私の疑問に答えて言った。
「奴はペテン師さ」と。
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