第1章の4

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そしたらあの馬鹿、そんな罪状なんかどうだっていいから、とにかく奴がやってるペテンの証拠を挙げて、詐欺罪か何かで告訴してやれって言うんだよ」 ギルバートはそこまでを早口にまくし立てた。 私には言ってる意味が飲み込めない…。 「だけど仕方なかったのさ。 俺がそいつの親父の“顧問”をやってんだから。 断りたくても断りようがなかったんだ」と、ギルバートは最後にさも嘆かわしそうに付け加えた。 ………ちょっと待て……。 “顧問”……て、まさか…。 私の頭の中に有り得ない職名が突如として浮かび上がってきた。 まさか、この突拍子もなくて、途方もなく料理音痴な若者の正体は…。 私は思わず立ち上がっていた。 「ギルバート、君はまさかとは思うが“弁護士”かね?」 「まさかって何だよ?そりゃあ俺はよく“そんな風には見えない”とか言われるけど、“まさか”って何だよ?」 若者が、下から恨めしそうに私の両の目を覗き込んでいる。 しかし私は、もはやそんなことなどどうでもよかった。 こんな、年端もいかぬ子供みたいな顔をした若者が、まさかもまさか“弁護士”だとは……。
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