第2章の2

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「その先入観!その思い込みが全てを邪魔してる!!」 若き弁護士が言い放った。 若いとはいえ、このギルバートという男は、相当利発なようだ。 中年警部の私と同等か、もしくはそれ以上に頭が切れるらしい。 「明日までの宿題だぜ、警部。明日のこの時間まで猶予をやるから、奴が仕込んだネタをあげてみせな」 そう言うと、ギルバートは私に背を向けて、1人足早にアパートのある方向へと歩き去って行った。 …しまったな、と私は思った。 私は別に突っ込まなくてもよい、大変厄介なものに足を突っ込んでしまったな、と。 ギルバートの言う通りだった。 せっかくの休日だったのだから、ここぞとばかりに家で1人の時間を堪能しているのだった…。 しかし困った刑事の性分が“首を突っ込め”と言ったのだから仕方がない。 私も刑事だ。 あの若者に遅れをとってはいられない。 なんとしても、ワイングラスの謎を明らかにせねば…。 しかし、私はいずれ思い知ることになるのだ。今私が頭を抱えさせられている、このイカサマなど、ほんの序の口に過ぎなかったということに…。
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