第2章の4

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「おい、ギルバート!もういいだろう!!一体どうやったら、空のワイングラスの中から水が出てくるんだ?」 すると、問い掛けられた若者が、廊下の手すりからひょっこり顔を覗かせて答えた。 「そんなことは不可能だ」と。 この男は、私をからかって楽しんでいるのだろうか? というよりも、私はこんな、どうかすれば我が子と呼べる程に歳の離れた若者に面白がられているのか…? 本当に最悪の気分だった。 ギルバートは薄く笑って言った。 「警部、そこちゃんと掃除し終わったら教えてあげるよ」 完全に遊ばれているな…。 そう思ったら、もはやさっさと部屋へ戻っていくギルバートの背中に向かって、反論する気すらしなかった。 私はしぶしぶ、階段の掃除にかかることにして、拾い上げた雑巾のあまりの臭さに顔をしかめた。 ギルバートが作った料理の臭いがする…。
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