第3章の1

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そしてその時、私は頭の中に、生まれて初めて神の声というものを聞きました。 いや、声というよりも、ほぼイメージに近かったかもしれません。 そしてその声は私にこう言ったのです。 “我はお前に3つの力を授ける。 ひとつに、我の声を聞き、人々に伝えてゆく力。 ひとつに、それを飲めばどんな病気でも治癒し、どんな願いでも叶えることのできる、聖水を生み出す力。 最後のひとつに、何マイル先のことであろうと、何でも見通してしまう力”」 エドワードがそこまで語ると、その場に居た観衆達は、皆口々に畏怖の念を唱え始めた。 エドワードは更に続ける。 「“お前は我の与えしこれらの神通力を、世の為に、そして人の為になるように使え。 決して卑しき想いに駆られて、悪しき行いに使ってはならない。 お前の力は、必ずや善き者を見いだし、そうでない者の心を見破ることを可能にするだろう”」 その言葉を聞いて、“そうでない者”の部類に属するのであろう者達が、あからさまに震え上がるのが分かった。 エドワードはそれに気付いたのか、次に皆を安堵させる言葉をかけてみせた。 「私はここに居る皆様に、大変感謝しているのです。 私は幼い頃、よく友人に馬鹿にされました。 彼らは私を気味悪がったり、嘘つきだと言ってからかったりしたのです。 しかし、ここに居る皆様は違いました。 私のことを心から信用してくれた。 私はそれが本当に嬉しくてならないのです」 もはや涙を浮かべんばかりに、エドワードはその声を震わせて感謝の意を伝えた。 なんという役者か…。 そこら辺の大根役者よりも、この男は数倍も役者だった。 観衆の1人が、「エドワードさん!あなたは我々を良い方へと導いてくれたんだ。信じないわけがない!」と声を張り上げると、その興奮は次々に飛び火した。 「そうだそうだ!エドワードこそ神の代弁者だ!!」 誰もが口々にそんなことを叫び出し、その場は収まることを知らないらしかった。 大合唱が修道院の高い天井に導びかれていき、跳ね返されて再び地上に降り注ぐ。 「だったら今、何マイルも先のことを透視してみろってんだよ」 私の隣で、今までエドワードの独演会に黙って参加していたギルバートが呟いた。 私は久し振りに彼の存在を思い出して、ふと考えついた。
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