第3章の1

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私は、「いいや、違いますがね」と答えた。 誘導尋問かもしれない…。 しかしエドワードは、私の返答を聞いてクスッと笑った。 そして、「まぁいいでしょう、警部さん」と言ったのである。 何故私が“警部”だと知ってる…!? さっきのは、決してあてずっぽうなどではなかったのだ。 そしてエドワードという男は、やはり私が思っている程に単純な男ではなかった。 「いいですよ、警部さん。あなたの望んだように、やってご覧に入れますよ」とエドワードは言うと、祭壇を自らの背にして立ち、まるで魔術師か何かのように、大業な仕草でその両腕を広げた。 そして両の目を閉じ、大きく息を吸い込む。 観衆は三度静まり返った。というより、息を呑んで全ての成り行きを見守っている。 この男、本当にそんな不可能なことをやってみせるつもりか…? 私は半信半疑で、横の若者を一瞥した。 ギルバートは、そんな私と目が合うと、フィッとそっぽを向いてしまう。 その目が“知~らね”と言っていた…。
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