第4章の1

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この若者のペースにはめられて、私も随分キャラが壊れてきたなと思う。 本来の私なら、こんな失礼なことを、いくら思っていたとしても、直接本人に言ったりはしないのに。 しかし、そんなことを言われたにも関わらず、ギルバートは何故かとても嬉しそうに、にっこりと私に微笑んだ。 訳が分からず、私が面食らっていると、今度はそのままクシャクシャの顔になり、突然若者は泣き出したのだ。 私はもはや、何が何だかさっぱり分からず、唖然としているしかなかった。 いや、唖然としながらもチクチク心が痛んだ。 私か…?私が言ったことが悪かったのか…? それとも、これはただの泣き上戸だろうか? ギルバートはひとしきり私の前で泣いた後、そのままテーブルに顔を伏せて眠ってしまった。 ああ…疲れる。もう何もかも疲れる…。 そう思いながら、私は殺風景なギルバートの部屋の中から、なんとか1枚のブランケットを探し出し、それを寝息をたてる若者に羽織らせると、彼が再び目を覚まさない内に、ほうほうの体で逃げ出した。 あの若者は猛獣か…。
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