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男は本当に嬉々とした表情で、馴れ馴れしく私の左肩をポンポン叩いてくる。
「な、警部さん。それで分かるだろ?
エドワードって男は本物なんだよ。
あいつには本当に神の声が聞こえてる。あの男は本当に神の力を分け与えられた、特別な人間なんだよ!あんたは信じるよな?」と、自信たっぷりに念押しして。
「そんなもんは神の力でもなんでもなく、単なる経済学さ」
その時、私の背後から飛び込んできたのは、とてもよく聞き慣れた声だった。
私の前方に並んでいた多くの人間が、それに気付いて振り返る。
まさか誰も、その若者が再びここに姿を現そうとは思っていなかった様子で、一気に会場内にどよめきが走った。
「貴様、性懲りもなくまた来たのか!」と、今まで友達のように私にペラペラと余計なことを話していた男が、顔色を変えて怒鳴った。
それが合図であったかのように、参列者席の前方からも大量にヤジが飛んでくる。
しかし若き弁護士は、そんな声など全く聞こえていないかのように、涼しい顔をして私の横に例の指定席を確保した。
「おい貴様!」と先程の男が再び叫んで、無反応なギルバートの胸ぐらを勢いよく掴んだ。
「エドワードのことを散々愚弄しやがって!いいか、あの男にペテン師だの何だのと難癖つけるってことはなぁ、ここに居る俺達全員を小馬鹿にしてるってことだぞ?分かってやってんのかてめぇ!!」
勿論。
小馬鹿どころか、この若き弁護士は、ここに集まった者達を一切がっさいまとめて馬鹿にしていた。
代議士だろうが、大商人だろうが、ギルバートの瞳の中では誰もがペテン師の、単なる“カモ”として映っているのに違いない。
それ程にギルバートには自信があったのだ。
「だったらなんだい」
耳元でわんわん喚き散らす、どこぞの金持ちの馬鹿息子を、ギルバートは歯牙にもかけずに突っぱねた。
「まぁ見てりゃいいさ。いずれ来るだろうよ。いかに自分が愚か者だったか、思い知る時が。その時になって、好きなだけ後悔すりゃいいさ」
言葉の最後に、ギルバートはニヤリと笑ってみせた。
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