第4章の3

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ギルバートは前を向いたまま、私の問いに小声で答えた。 「あの時とは違うさ。自信たっぷりに、俺にこの箱を手渡して、しっかり確認しろと念押ししてる以上、調べたってこの中には何も無いってことなんだよ」 「…と、君が思うのを見越して、何か仕掛けてあったらどうする? こんな薄暗い中じゃ、ちょっと覗いて見たぐらいじゃ分からんのだろ?特にこんな黒い箱では…」 私はギルバートの両手から箱を取り上げ、表面も中身も蓋も本体も、ありとあらゆる角度から調べた。 何度も手で触ってみたが、結局ギルバートの言った通り、めぼしい物は何も確認できなかった。 私はようやく諦めて、ギルバートの手の上に箱を返却する。 「だから何も無いんだってば」と、呆れたようにギルバートは言った。 「っていうより、俺はあのペテン師がこれからやろうとしてるトリック、既に大体読めてんだよ」
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