第4章の5

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そして私の前に連れて来て、やったことを皆さんの前で洗いざらい話させればいいでしょう。 本当にそんな人物が居ると仰るなら、できる筈です。 今のあなたは何もわかっちゃいないのと同じですよ。 ええそうです、“証拠”ですよ。 私がペテン師だという確かな証拠を、ここに居る皆さんの前で私に見せて下さい。 それが無理だと仰るのなら、残念ですが、卑怯なのはあなたをの方ですよ、弁護士さん」 それは、既に熱くなっている観衆を更に煽った。 今や側にいる者の声ですら、なかなか聞き取れない程である。 「おい!ギルバート、なんとかならんのか!?」 私は両手で耳を押さえて言った。 なんともならないと、本当は知っていたが…。 “馬鹿なこと言うなよ” ギルバートの唇が、微かにそう動いたのが見て取れた。 それは私に向けられた言葉なのか、祭壇の前で嘆かわしそうに俯く男に向かって発せられたそれなのかは、結局分からなかったが…。
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